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KAYANOのイタリア気分 No.10

2002年10月号

冷静の味覚ポルチーニ

メルカートに並ぶポルチーニ

先月話題にした、情熱の果実、メルカート(市場)の赤がいつしか、茶色のグラデーションに変わる時、イタリアに秋がやって来た事を感じ始める。秋の味覚の主役、キノコ達の登場だ。トマトを情熱の果実と表現するなら、キノコは「冷静の味覚」だろうか?(冷静と情熱、映画のタイトルみたいですね。)落着いた味覚があらゆる料理を引き立ててくれる。そのままソテーや網焼きにしても良いし、パスタでも魚でも肉でもキノコを添えれば、シックな秋向きの料理に仕上がってくれる。

イタリアを代表するキノコはやっぱり「ポルチーニ」。秋~冬の北イタリア料理には欠く事のの出来ない食材だ。乾燥にも適しているので季節を問わず楽しめる。

私が初めてポルチーニと出会ったのは、ふぞろいにスライスされた乾燥の物だった。ボローニャに住んでいた頃の事、私はしばらく40代の独身女性のアパルタメントに間借りをしていた。名前はリタと言い、ヴェネト地方のベローナ出身の才女でスコーラスーペリオーレ(高校)の教師だった。職業柄か、言葉が不自由な私にも辛抱強く、料理を初め、色々な事を教えてくれた。彼女はとても行動的で、自然をこよなく愛し、春は野山を歩きスケッチをし、夏は海に出かけダイビング、秋はキノコ狩りや山菜取りに出かけた。 そのふぞろいなポルチーニはリタが秋に収穫して、乾燥させた物だった。他にも、アンズ茸やアミガサ茸他、4~5種類のキノコがドライにして保存瓶に大切に納められていた。

ポルチーニのリゾット

その日リタは私に「ポルチーニのリゾット」を作ってくれた。野菜と肉で取ったブイヨンに、水で戻したポルチーニをたっぷり加え、20分程、時々かき混ぜながら炊き上げる。優しくかき混ぜるその姿は、彼女がポルチーニの味が染み込むようにとおまじないをかけているように見えた。そしてバターと生クリームとパルミジャーノをたっぷりとかけ仕上げた。リゾットの色はロイヤルミルクティーのように優しいブラウン、部屋いっぱいに高い香りが漂った。彼女が魔法をかけたのかと思った程、味はとても深く美味しく、キノコ好きの私には答えられない味だった。

その時の季節は冬、リタは私に「9~11月にはフレッシュのポルチーニが食べられるよ。いつか機会があったらベネトの山にキノコ狩りに行きましょう!」 3ヶ月の限定つきのフレッシュのポルチーニを私が食べるには、次の秋まで待たなければならなかった。残念ながら彼女とキノコ狩りに行く約束は未だに実現されていない。

ぶどうの葉で蒸し焼きにしたポルチーニ

そして私がフレッシュのポルチーニを初めて口にしたのは、それから数年が経っていたと思う。ブドウの葉に包まれて蒸し焼きにされた物と、クリーム系で手打ちパスタソースに仕立てられた物だったが、ふわふわで香りは控えめながら、私の期待を裏切らない素晴らしい料理だった。特にパスタソースは白トリフのオイルがより味を引き立ててくれた。

ドライとフレッシュはそれぞれの美味しさがあった。よく生徒さんに「シイタケと干しシイタケの違いよりも違う。」と説明するが、味の違いを伝えるうまい言葉が見つからずとても歯がゆい。また、良くポルチーニをイタリアの松茸と訳す人がいるが、私はこの表現に納得できない。松茸は乾燥に向かないし、第一庶民には手が届かない。一方、ポルチーニは少々値が張るが、決して手の届かない食材ではない。

乾燥ポルチーニ

そう言えば、ポルチーニにはこんな思い出もある。9月に南イタリアを旅行した時の事だ、秋はキノコ、当然ポルチーニと思いつつ、レストランで注文すると、「あれは北イタリアの人間が食べるもの、僕達はおおかた好まないよ」 その後、南イタリアの友人に聞いてみると、「子供の頃から食べ慣れていないから、特別好きじゃないの、香りが強すぎるし、私達の地方にはもっと美味しいものがあるもの。」っとのこと。 イタリア人は皆あの魅惑的なキノコが大好きなのだと信じていた私は、かなりの驚きだった。と同時に、自分の地方の料理に対する誇りも感じたのです。

今、イタリアはまさに冷静の味覚、キノコの季節!南イタリアの話しはともかく、私達はキノコ好きの日本人、この季節にイタリア、特に北を旅行する方は是非この冷静の味覚を味わってみてください。

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