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KAYANOのイタリア気分 No.53

2006年5月号

1900年(navecento) イタリア近代史が身近になるはず!

パダノ平野

先月の気分にも出てきた「パダノ平野(Pianura padana)」は、アルプス山脈とアペニン山脈に挟まれるように広がり、ロンバルディア州の他ピエモンテ州・エミリア ロマーニャ州・ベネト州の4つの州にまたがっている。

このポー川の恵みを受けた肥沃な大地は豊かな農業地帯を誕生させ、多くの都市を育ていつの時代にも交通路として、産業や農業の発展に、重要な役割を果たして来た。

パダノ平野の田園風景

特に中世都市国家を礎にした、マントバ、クレモナ、ヴェローナ、パルマ、フェラーラ等、今でも静かに貴族の繁栄を忍ばせ、その歴史と共に威厳を保っている。

現在はミラノを中心にイタリア経済の中核である事は周知の事実。 しかし、その歴史は賞賛に値することばかりではない。 近代のイタリア史においては、地主制度の中で農地解放の手段として、共産主義が発展しそれを弾圧するファッシストを生み育てたという悲しい歴史も刻まれている。

1900年のパンフレット

ちょうど日本が軍国主義の道を歩み始めた頃と重なる。 両国はドイツを含め1940年に三国同盟を結び第二次大戦参戦の悲劇へと突き進んでゆく。多くの犠牲を出し人命を奪った大戦。イタリアの戦争終結は1945年4月25日。日本の3ヶ月前の事。その後、この日は「イタリア解放記念日」と定められている。

この時期になると私の心に決まって蘇る映画がある。 題名は「Novecento」日本語題は「1900年」。1976年製作のベルナルド ベルトッチ監督。パダノ平野・パルマ郊外のエミリア平原を舞台にした5時間以上の大作だ。

物語は1900年の同じ日に地主の子アルフレードと小作人の子オルモが生まれるところから始まり、1945年、イタリア解放のその日を迎え、国民が自由を手に入れるところで終る。 主役の二人は激動の時代を地主と小作人と自らの運命の道を歩むしかない。相反する立場のながら友情をはぐくむ一方、いくつかの事件を通しその確執に悩み続けるのだ。そして二人と並び、大切な登場人物はパダノ平野に生きる農民達だ。 映画は時代背景を絡めながら実に良く出来ていて、少しも5時間という長さを感じない。

私が初めて見たのは15年前、新宿の映画館だった。 スクリーンに広がるポー川流域・農村地帯の映像はとにかく美しい。それと対照的なファッシストの暴虐なふるまいが、農民を苦しめ続けるシーン。ファシストの管理人は確かアッチラという名だった。それまで詳細を知らなかっただけに、その悲惨な歴史事実に終ってからしばらく声を出す事ができなかった。  しかし時間が経つにつれて不思議と心に浮かんでくるのは、平野に生きるイタリアの農民達の力強い姿、大地から沸き出でるような生命力だった。鍬を握る女達、蛙を捕まえ売りに行く少年、牛に鍬を引かせるシーン。ラスト近くで長い間、土に埋められた赤い旗を広げる農婦達。少しのポレンタを家族で分け合うような貧しい生活を強いられても、心では決して独裁に屈しない、農民の強い意志が、ファシストを倒し勝利を勝ち取ったのだ。

映画のシーン

また、いつも争いが絶えない、二人の主人公、アルフレードとオルモ。でも心のどこかで深く結びついていることを物語る場面が面白おかしく浮かんで来る。ラスト近く、老人になっても些細なことで喧嘩をし続けるシーンがそれを印象づけている。そういつまでも根に持たない、イタリア人の特質を描いているようで微笑ましいのだ。 そうそう地主の子アルフレードを演じたロバート デ ニーロの若さと演技には惚れ惚れしました。

もし、まだ見ていない方がいらしたら、新緑の爽やかなこの季節、1900 年(novecento)を鑑賞されてはいかがでしょうか?  川に流した農民の涙、土に染み込んだ農民の信念を通してイタリアの別な顔が見えて来るかもしれません。 そして、平和への思い新たに、イタリアの近代史がきっと身近になるはずです。

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