KAYANOのイタリア気分 No.2
2002年2月号
香り高き黒い液体 バルサミコ
今月も昨年9月北イタリアを旅行した時のお話です。モデナのバルサミコの醸造家を訪ねました。バルサミコは夏の盛んな熟成と冬の穏やかな熟成を何年も繰り返しながら深みをましてゆきます。前回訪れたのは早春。菜の花と桃の花が咲き始めバルサミコの貯蔵庫は冬の眠りから醒め切らない感じで、おだやかな香りが漂っていました。今回は夏の盛んな熟成の後でした。何とも言えない甘酸っぱい香りが漂っていました。そして新たなるバルサミコの白ブドウ(トレビアーノ種)の摘み取り、仕込みと全て見る事ができました。
上の写真がぶどうの圧搾機。圧搾したモスト(ブドウ液)を沸騰しないよう一定温度を保ちながら煮詰めます。それを樽につめて熟成させますが、樽の上に小さく空いた穴の上にはガーゼがかけてあります。そこから少しづつ蒸発し、樽のサイズと種類を替えながら芳醇さを増してゆくのです。
トラディショナルとしてD.O.C.(原産地呼称)をもらえるのは、モデナのあるレッジョエミリア地域で作られた12年以上年を重ねた物だけです。バルサミコ協会が定めた丸い瓶に詰められます。よってその他は「伝統的なバルサミコ」とは名乗れません。もちろん花を思わせる香りも風味もトラデショナルにはかないません。
前回は25年物を持ち帰りました。ここまで年月を重ねたものは、ソースとして少量使ったり、フルーツにかけたり、アイスクリームと一緒に頂きます。今回は40年物をゲットしました。どんなふうに頂こうかただいま思案中です。
1861年のイタリア統一前は貴族の秘蔵の「公爵のお酢」としてこの地方でしか知られていませんでした。モデナの人でさえ庶民は口にできなかったに違いありません。今東洋人の私がこうして味わうことができるのも、イタリア統一の英雄ガルバルディのお陰でしょうか?