KAYANOのイタリア気分 No.3
2002年3月号
イタリアの春
昨年、一昨年は3月の中部イタリアを訪ねる機会を得た。春の目覚めを感じるこの季節、時々目にした物は、咲き乱れる菜の花と桃の花だった。
イタリアで感動するものの中に「お花畑」がある。
同種類の花が『咲き乱れる』という表現がぴったりに、見渡す限りの花の海になる。10年以上前イタリアで暮しはじめた頃、季節は初夏、ボローニャから北へ向う電車から真っ赤に咲き乱れるポピー畑を良く見かけた。幼い頃私の家の裏はまだ田んぼで、春にはそこがレンゲやクローバーのお花畑になった。花々が枯れるとそれが「お米の肥料」になると母から聞いた覚えがある。いつしかそこも住宅地となり「お花畑」と言うものを全く忘れていた。真っ赤なポピーのじゅうたんは幼い頃の思い出を通して、イタリアに親近感を覚えるひとつの光景になったのでした。
忘れられないイタリアのお花畑にトスカーナのひまわりがある。6~7月にかけて、比較的背の低いひまわりが太陽に向って鮮やかな黄色い花を一面に咲かせていたのです。その丘の上に塔の街サンジミニヤーノが見えた時は感動で言葉を失った記憶が残っている。8月に同じ場所に戻った時は、ひまわりは黒く枯れはてていて、その後種からオイルを取るのだそうです。美しく懐かしい感動をくれた「お花畑」は肥料になったり、オイルになったり、枯れた後も私達の役に立っているのですね。今年の5月はアーモンドの咲き乱れるシチリアを訪れる予定だ。この季節がもっともシチリアの美しい季節とされるだけにシチリアの「お花畑」を今から楽しみにしている。
ところで3~4月のイタリアに春を告げる、2つの行事があるのを知っていますか?
まずは、3月8日は「女性の日(フェスタ デッラ ドンナ)」シンボルのミモザの花が男性から感謝を込めて女性に贈られる。女性はこの日、家事や育児から解放されて、遅くまで女友達とおしゃべりを楽しむそうです。そう言えば日本には女性に感謝する日ってないですよね。私は毎年、「女性の日」を意識して、ミモザケーキを作り、友人や家族とおしゃべりを楽しんだりしていますが.....。
そして、忘れてはいけない宗教行事が復活祭(パスクア)です。十字架に張り付けにされたキリストが奇跡的に復活した言い伝えを祝うだけに、イタリア人にとってはクリスマス(ナターレ)の次ぎに大切な年間行事になっている。この頃お菓子屋さんのウインドウを飾るのは、鳩の形の焼き菓子「コロンバ」と、卵の形をしたチョコレート「ウオ-バ ディ パスクア」。チョコレートの中には子供のおもちゃなどプレゼントが入っているのです。去年3月、イタリアを立つ日に直径30cmはある、チョコレートの卵を街角で何度も見かけ、持ち帰ろか否か、かなり迷ったのですが...。結局他の荷物の多さを考えてあきらめることにした。その代わり、直径2cmの小粒なのを200ケ程持ち帰った。大きなチョコとプレゼントをひとり占めよりも、お教室でイタリアの小さな春をひと粒づつ、皆さんにお分けしたのでした。 2002年のパスクアは3月31日だそうです。この頃イタリアの友人に電話をすると最後に必ず「ブォン パスクア」(楽しい復活祭をね!)と春を告げる挨拶をしてくれるのです。