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KAYANOのイタリア気分 No.6

2002年6月号

シチリアの旅

シチリアの味覚を紹介するパスクワーリノシェフ

4月末から5月にかけてシチリア島を訪れた。この島のベストシーズンと言われるだけあって、気候も良く天気にも恵まれ、本当に素晴らしい旅ができた。あちこちに咲き乱れる花々が、旅を更に華やかな物にしてくれた。

地中海の中心に位置するこの島は「地中海の十字路」と呼ばれ、その立地から古代より様々な民族の侵略と支配を受けながらも、独自の文化を築き上げてきた。歴史上で分かっているだけで16回支配民族が変ったそうだ。それぞれの民族が残してきた遺跡や建造物は、今も歴史の見本市のように見る事ができる。

そんな歴史の遺産もさる事ながら、内陸はオレンジ・レモン・オリーブ・アーモンドがたわわに実り、肥沃な大地からはトマト・ナス・ズッキーニ等、味の濃い野菜が収穫される。中部のアルカモや西のマルサラのあたりはトスカーナを思わせるようなブドウ畑が広がり、秋にはフルーティでコクのあるシチリアワインに仕立て上げられる。この太陽と大地の恵み、そしてコバルトブルーに輝く四方の海から水揚げされる新鮮な魚介類が出会い、グルメな人々にはこたえられないシチリア料理を作り出す。

2年前フェリーで本土へ渡った時・・・・

そんな魅力的な島を訪れたのは今回で5回目。何度回を重ねても感動は尽きない。初めて訪れたのは10年程前のこと。生活していたボローニャから寝台車で16時間かかってシチリアの地を踏んだ。シラクーザでレストランを開いているパスクワーリノシェフに逢うためだった。彼はシチリアを訪れるきっかけを作ってくれた上に、プライドを持って私にシチリア料理の魅力を教えてくれた人だ。今もシラクーザで二つのレストランをなさっている。

旅の途中で驚いたのはメッシーナ海峡を越える時の事だ。先端のカラブリア州の街レッジョディカラブリアに着くと、貨車を一つずつ切離し、線路の付いたフェリーに積んでゆく。そしてシチリアの街メッシーナに着くとまた貨車をつなげる。

二つの街の距離は最短で10kmと言うから、荒れた天気でない限り向こう岸が見渡せるから、海を渡るのは物の10分位。切離しとつなげるのにかかった時間も含めて海を渡るのに要した時間は1時間以上だったと思う。今もこの作業は続いているらしい。つまり未だに橋はできていない。知合いのおじいさんに「どうして橋が出来ないの?」と聞いてみたことがある。90年シチリアの歴史を見つめてきた彼は「予算が無いんじゃなくて意志が無いんだよ。」っとポツリと言っていた。イタリアも先進国、技術も予算もあるはずだろうに、意志が無いとどんな事も始まらないってことね。今は滞在時間が短くシチリアまでは飛行機で飛んでしまうが、物珍しそうにこの作業に見入っていた時間がたっぷりの留学時代が懐かしい。

シチリア島

タオルミーナのギリシャ劇場

メッシーナ海峡に代表されるように、10年前に比べてシチリアはあまり変わっていないような気がする。

ボンネットをガムテープで止めたボロボロの車や、パレルモの路上で物乞いをする人達は少なくなった分、少しは豊かさも出てきた気がする。 しかしこの島の時間はゆっくりと流れ、人間の歴史と自然の雄大さを教えてくれるのだ。

セリヌンテの遺跡

カルタジローネの階段

活気があるパレルモの喧噪、洗練されたリゾート地タオルミーナ、エトナ山が一番美しく見えるカターニャ、海とのコントラストが素晴らしい遺跡の街セリヌンテ、海に小さな半島のようにせりだしたチェファルー、陶器でできた階段がかわいいカルタジローネ。

この島には魅力があふれ、好きな街は数えれば切りがない。

でも私が一番、古代から始まるシチリアの歴史を思い、静かに厳かな気持ちになれる街はパレルモの西、エリック山の頂上にあるエーリチェという街だ。この街を私は今回を含めて3回訪れている。今では観光すると言うよりは、心の静けさをもらいに行 く場所になっている。来月はこの街についてじっくりと語りたいと思っている。

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