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KAYANOのイタリア気分 No.17

2003年5月号

アグリツーリズモ体験

アグリツーリズモの看板の前で

皆さんはアグリツーリズモという言葉を聞いた事がありますか? 10年程前からイタリアでブームになっている田舎にある個性的な宿のことです。これはイタリア語のアグリクルツゥーラ(農業)とツーリズモ(観光)を一緒にした言葉で、農家が経営する宿泊施設を意味します。わかりやすく言えば、農家宿泊体験ツアーとでも言いいましょうか。農家が付かなければ、日本の民宿やペンションと言った感じですね。中部イタリアのトスカーナ州やウンブリア州が一番盛んなようですが、イタリアの田舎ならどこの地方でも看板を見かけます。

初めてアグリツーリズモの存在を知ったのは、今から7年前、96年の夏の事でした。「イタリアではアグリツーリズモが大流行!」そんな日本の新聞記事を見たとたん出所の食品メーカーに問い合わせ、3日後にはその宿を予約をしていた。(昔はかなりフットワークが軽かった。)

庭には沢山のイチジク

場所はプーリア州のカステラーナという街。オリーブ畑に囲まれた先祖代々のヴィッラをおしゃれな宿泊施設に改造し、昔学校の先生だった活動的で元気なマンマが料理を作り、息子が片手間農業をしながら、手伝っている。広い敷地にはオリーブはもちろんイチジク・アーモンドの木が茂り、庭には沢山のイチジクが干してあった。昼間マンマから料理を習い、疲れると昼寝をする。夜は息子の友人と近くの街コンベルサーノへ出かけて行って、おしゃべりを楽しんだっけ....。その時はそれが、本物のアグリツーリズモだと思っていたが、今思えば、本物の農家が経営する宿とはちょっと様子が違っていた。でも短期滞在で日本人が体験するイタリア田舎暮しには、十分だった。

4年前に、これぞ本物のアグリツーリズモに出かけて行った。これも、カステラーナと同じプーリア州でアルベッロベッロの郊外だった。敷地では、牛を飼い、野菜を育て、4人の家族で助け合いながらアグリツーリズモを営んでいた。ただこの時は生徒達と14人の団体だったので、泊まらずに、農家を見学して、チーズ作りをし、食事をしただけだった。5~6人でシャワーひとつの簡素すぎる宿泊施設は日本人には抵抗があるだろうとの案内人の配慮でもあった。その夜、アルベッロベッロの街の野外フェスタに来ていた家族に出くわした。農家の厳しい仕事を終えて、楽しんでいる姿を見て、ほのぼのとした気持ちになったのを覚えている。

プールまでついたトスカーナのアグリツーリズモ

2年前にはトスカーナで自称アグリツーリズモに泊まっている。ここは、農業をやっている訳でも酪農をやっている訳でもなかった。 リタイアした叔父さんが経営し、若い奥さんが料理を作っている。彼等は近くの農家から材料を買い、トスカーナ料理を作って、旅行者に提供している。 目の前には写真に出てきそうな糸杉のあるトスカーナの丘が広がり、ロケーションはとにかく素晴らしかった。その立地のせいか、奥さんの料理の腕のせいか、お客様は一杯だった。生の空豆とペコリーノトスカーノチーズ、そして郷土料理のリボリータ、本物のトスカーナの食に出会えた事は大きな収穫だった。

エトナ山のふもとのアグリツーリズモで

そして昨年の春にはシチリアのエトナ山のふもとでは大規模アグリツーリズモで食事をした。

ここは広大な敷地の中はオリーブとブドウ畑が広がり、牛・豚・羊・猪・ダチョウ・鹿まで飼っている。それを使ってチーズやハムをつくるのだが、小さいながら工場のようになっている。ワインのカンティーナも中々りっぱな物だった。従業員もかなりいて、農作物製造所みたいな感じだった。 もし宿泊をするとしたらオーナー所有のお城に泊まるそうだが「お化けが出るよ!」と従業員が真剣に話す。「仕事が多すぎて、宿泊客の面倒なんて見れないってこと?」とその時は思ったが、侵略と戦いが繰り返されて来た、シチリアのお城ならあり得たかもね。泊まらなくて良かったです。

ブドウ畑に囲まれたピエモンテのアグリツーリズモ

昨年秋には、ピエモンテでブドウ園のまん中のアグリツーリズモに泊まった。

そこは、スプマンテで有名なアスティの近くのカネッリという村のワイン農家だった。70代のマンマが料理を作り、息子夫婦がマンマを盛りたてながら経営をしている。清潔に掃除された客室といい、食事といい、家族の結束を感じる、なんとも暖かいおもてなしを受けたのだった。ちょうどワインの収穫時期でもあり、長期滞在のお客さんが彼等を手伝っていた。短い滞在が悔やまれた。

このように、一言にアグリツーリズモと言ってもスタイルは様々だが、私もイメージの中の「これぞ農業体験!」と言うのにはまだ出逢っていない気がする。だいたいにして短期滞在ではこれから無理ですよね。 しかしこれまで私が訪れた5件共、人々の人間性や生活に触れ素敵な経験をさせてもらったと思う。きっとそれが、アグリツーリズモ体験なのですね。もし皆さんのイタリア旅行が2度目、3度目だったら、大きな都市のホテルに泊まりお決まりの観光をするよりは、「アグリツーリズモ体験」お勧めです。どんなスタイルの宿に泊まっても、きっと素敵な出逢いと貴重な体験ができる事、間違えなしです。

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