KAYANOのイタリア気分 No.34
2004年10月号
ナポリの陽気さがピッツァの隠し味!
「今年こそ初めてヨーロッパで料理を学んだ街、パリに行く!」 8年御無沙汰のパリを一人で歩く姿を想像しながら意気込んでいたのに....... 結局ピッツァナポレターナの誘惑に負けて、今年もイタリア。しかも本家本元のナポリに飛んでしまった。
14年前にパリでフランス料理を勉強していたのに、イタリア料理を選んだ頃の事を思い出す。お洒落なパリのエスプリより、庶民的なナポリの道化の方が私には合うのかも?
そうそう、今回はピッツァに注目の旅でした。
まず、駅の近くで目を引かれたのは 「VERA PIZZA」の看板。
「ナポリに着いたらまずはピッツァ!」「ナポリとの別れも ピッツァで...。」ということなのか?駅周辺にはピッツェリアが多い。時間に関係なく込み合っている。大半が外国人観光客のようだ。ピッツアァはナポリの大切な広告塔、そして外国でも大活躍の親善大使のようだ。
街を歩いていると、それよりも混み合っている店を発見してしまった。かの有名な 「DA MICERE」。
店の前に行列が出来ている。こちらはどうもナポリッ子の方が多いようだ。サレルノから来た友人と限られた滞在時間で並ぶのは時間の無駄と、テイク アウトして広場で食べることにした。
ここには「マリナーラ」と「マルゲリータ」の2つのメニューしかなかった。この2種類はナポリで人気を争う2種のピッツァだそうだ。両手で大きく円を描いた位のサイズなのに値段は1枚3ユーロとかなり安い。
「マリナーラ」が登場したのは1750年頃。名前から魚介が乗っていると思いきや、とてもシンプルで生地にトマトソース・オリーブオイル・オレガノのみ。忙しい漁師がパン屋に作らせて手軽に空腹を満たしたのがその名の由来だそう。トマトを使った最初のピッツァです。
そして「マルゲリータ」は西暦1889年初めて作られた。イタリア王国の第二代国王ウンベルト1世の王妃マルゲリータ の好物だったため、彼女の名前が付いたのだそう。こちらもトマトソース・バジリコ・モッツアレラと、とてもシンプル。目にも鮮やかなイタリアンカラーとあって常に人気は1番だそうだ。
「DA MICERE」に入り、注文するとピッツァイオーロ(ピッツァ職人)のぺぺが目にも留まらぬ速さで生地を伸ばし、2~3分で焼き上げてくれた。私の熱い視線が嬉しいのかとても幸せで楽しそうだ。「わかった!この陽気さがナポリピッツァの隠し味なんだ!!」 ぺぺは17歳。まだあどけなさが残る。詳しく話しを聞きたいがこの忙しさではとても無理...。年と名前だけ聞いて、かろうじて写真を撮らせてもらいました。彼の陽気さが伝わりますか?
マリナーラとマルゲリータ、どちらも評判通り美味しい。縁が芳ばしく焦げ、生地がもちもちとした、あの味は忘れることは出来ない。生地とトッピング、特に軽いトマトソースとの相性は最高だった。味と香りをお届けできないので、広場での記念撮影をお送りしますね。私もかなり幸せそうですね。
次の日に「DA MICERE」の前を通りかかった時も溢れんばかりの客。この店には客引きの為の「Vera pizza」の看板は全く不要のようだ。「ぺぺ!頑張ってね!」と今日も陽気にピッツァを焼いているだろう彼に、外からエールを送った。
4年ぶりの今回のナポリ滞在は2泊3日。とにかく歩き回ろうと底の厚い靴を選んだ。何時間歩いただろうか?足の小指には大きな豆ができた。 ピッツェリアもたくさんあったが、La pizza tagliaと呼ばれる「切り売りピッツア」の店もそこらじゅうにあった。時間のない時や小腹が空いた時にふらっと立ちよれる。ナポリに限らず大きな街ならよくあるお店で、そう言えば私もイタリアに居る時 は何度もお世話になったっけ。
3日間の滞在。初めはピッツァだけに注目していたのですが、ナポリを歩けば歩くほど、街の魅力を発見したのです。 来月はピッツァだけでは語れない、改めて感じたナポリの奥深さをお伝えしたいと思っています。