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KAYANOのイタリア気分 No.35

2004年11月号

ナポリの魅力 ~そこは一年中がナターレ(クリスマス)~

「ローマ・ナポリ・パレルモ」イタリアを一通り旅し終えた頃、この3つの都市を 「盗難渦巻く3都市」と密かに呼び「2度と足を踏み入れたくない!」とまで公言し たこともあった。1995年頃の事だった。ローマではジプシーに囲まれて何度も恐い経験をしたし、カメラを気付かぬうちに盗まれ「盗難証明」をもらうため警察に出向いたこともあった。ナポリ・パレルモにおいては私の目の前で友人のバックが巧妙なテクニックで盗み取られた。ナポリではその時通訳を兼ねてパトカーに乗って警察まで行き、事情聴取を受けた経験もある。このまま「心無い泥棒達」のせいでめげるわけにはいかないと、その後強気で何度か訪ねた。そして今はすっかり「魅惑に満ちた3都市」に変わっている。イタリア全土の治安が良くなったことも確かにあるが、何と言っても一番の理由は各々の歴史の深さに触れる程、魅力に引きつけられていったからだと思う。

ローマは古代と現代が同居する世界でたった一つの街。ローマ時代の遺跡は街に同化してその魅力に深みを与えている。人々はそこで現代の暮しを営んでいるのだ。歴史的に様々な民俗に支配されてきたシチリアの港街パレルモ。ギリシャ・ローマ・ビザンチン・アラブ・ノルマン・ドイツ・フランス・スペイン...。 いつ行ってもあの街では時代の見本市が繰り広げられているかのようだ。

ヴォメロの丘からのぞむナポリの街

そして今回から話題にするナポリに至っては歴史の深さもさることながら「行く度に魅力を発見する街」「探れば探る程はまって行く街」なのだ。まずは立地条件が素晴らしい。ヴォメロの丘、サンマルティーノ僧院の高台から芸術的な曲線を描くナポリ湾とその向こうにそびえるヴェスビオ火山を眺める時、その風景にうっとりとするのは私だけではないはずだ。「ナポリを見て死ね!」とは良く言ったものだ。

その高台から少し視線を下げて街に注目するとまん中でスッパリ街を分けている一直線に伸びた通りがある。B.クロ-チェ通りとそれに続くS.ビアジョ ディ リブライ通りだ。この2つの通りは通称スパッカ ナポリと呼ばれていた。

生活の躍動感に満ちあふれている

スッパカーレはイタリア語で分けるという意味があり、この通りがこの界隈の呼び名となったのだった。近辺にはゴシックやバロックの素晴らしい教会が並んでいるかと思えば、古ぼけた館があったり、メルカートや小さなお店が連なり、細い路地には洗濯物がはためき、生活の躍動感に満ちあふれている。活気のあるナポリの特徴を顕著に現しているこの辺は、1996年ユネスコの世界遺産にも登録されている。

9月の滞在の折、一番長く歩き回ったのもこの界隈だった。「ブ~ンブンブンブン!!」小型のスクーターが3台すごい音を立てて狭い路地を走り抜けて行く。乗っているのは10歳位の子供。その1台はお人形か天使の様なクリクリの金髪女の子。ナポリではエンジェルもスクーターに乗ってしまうのかしら?(まるで小型チャーリーエンジェルみたい!でした。)騒ぎに驚いて出て来た若者に「免許はいるの?」っと聞くと「いいや」と無愛想に答えて奥へ入って行った。(ナポリ人は陽気か無愛想、中間が無いんです。)

プレセピオは南イタリアのクリスマスツリー

にわかに静寂さが戻り、見回すと、まだ9月だというのに、周りはなんとナターレ(クリスマス)一色!プレセピオを売る店が両サイドに並んでいる。プレセピオは南イタリアのクリスマスツリーとも呼ばれる、キリスト誕生シーンを人形で現した物。シンプルな物から、光や水の仕掛けがある凝ったものまで、見ていて飽きることはない。 1年中クリスマスのこの小道を訪れる観光客は絶えないが、12月に入るとプレセピオの数と種類は倍増し、買い求める地元の人々でかなり華やぐらしい。一度その頃に訪ねて見たいものだ。

無心で絵付けをする人形職人の若者

ふとさっきの若者が消えた奥を覗くと、彼が人形に色づけをしている。彼は人形職人だったのだ。プレセピオに表情と心を込めているところなのか?その横顔の真剣さに思わず釘付けになった。私の視線に顔を上げようともしない。職人魂を見た気がして、無愛想な彼に愛着が湧いてきた。

ここの通りの名は「サングレゴリオ通り」、プレセピオと共にコメディア デッラル テ(即興仮面劇)に登場する道化役プルチネッラの人形も並んでいる。

「ナポリへようこそ!」と語りかけているようなプルチネッラ

ペペロンチーノ(唐辛子)は南イタリアでは縁起物

プルチネッラは南イタリアで縁起物とされる唐辛子との組み合わせが多い。彼は怠け者で哲学ぶったおしゃべり好 きのナポリ人の典型の様に言われている。

大小無数の彼らが「ナポリへようこそ!」っと歓迎してくれている様だった。

プレセピオにプルチネッラどちらも大きなのを持って帰りたかったが.....。

今は手のひらサイズの物がラフォンテの片隅でナポリの奥深さを語りかけてくれている。

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