KAYANOのイタリア気分 No.70
2007年10月号
収穫の秋 思い出す映画「苦い米」
実りの秋を迎えました。
イタリアも日本同様、お米の取り入れを終えた頃でしょうか?パスタのイメージが強いイタリアですが、実はヨーロッパ一の米(リソ)の生産国でもあります。イタリアの稲作地帯は北のピエモンテ・ロンバルディア・ベネト地方です。アルプスを源にアドリア海に注ぐポー川にそってその地域は広がっています。ミラノのマルペンサ空港近くは生産量が特に多く、飛行機から春には水を張った水田が空を映し、秋には黄金色の稲穂が輝きます。ミラノへ降り立つとき、是非注目してみてください。
ところで、皆さんは「苦い米(Riso Amro)」というイタリア映画をご存知ですか?
舞台になったのはピエモンテのヴェルチェッリです。1940年代後半のまだ戦後の爪あとが残る、貧しい時代のお話で、北イタリアの各地から、水田に季節労働として働きにくる女達の辛い労働の様子を描いています。
映画は彼女たちが歌を口ずさみながら素足をあらわに田植えするシーンから始まります。その歌声は重労働への心叫びのようでした。労働条件は過酷で、倉庫のワラ床が寝床でした。米を巡り様々な人間模様が繰り広げられた後、収穫のフェスタ(祭り)でクライマックスを迎えます。そして、僅かな給金と一袋ずつの米を貰い、生活の糧を得た事で、喜びいさんで故郷へ戻るシーンで終わっていました。作物の豊作は今も昔も人々に仕合わせをもたらしていたのですね。
ちなみに、1960年農村の機械化と共に彼女たちは姿を消したそうです。
イタリアへ留学して間もない頃、ミラノからトリノへ車で移動した時の事、映画の舞台のヴェルチェッリも通りました。その時、ドライバーさんが、映画の話をしながら、手を大きく左右に指し示しながら「リソ!リソ!全部リソ!!」と教えてくれました。時は6月、田植えが終わり、緑に輝く水田が広がっていました。稲田は日本でも見たことのある風景ですし、生活を始めてまもないイタリアにとても親近感が湧きました。今でも収穫の秋が訪れるとその風景が映画のシーンと共に思い浮かんできます。
私がイタリアで暮らしていた頃、白いご飯を炊くために、見た目小粒で日本の米に近い物を買っていました。確か、1kgで2000リラ(150円位)でお店で一番安価でした。後でわかったことは、チーズとの相性が良くなく、イタリア人が好まない米だという事です。その頃の日本人の友人は皆その米を選び、ふっくらと炊き上げて故郷を懐かしみ食べていました。イタリア人に「日本人は鳥の餌を好むだね~」と言われた人もいたとか….。お米の質の概念ってその国によってだいぶ違うのですね。
イタリアの米は何種かありますが、一般的に日本の米より少し大きめで水分が少ないのが特徴です。特にカルナローリ種はリゾットに最適な上に収穫量が少ないため、高級品とされています。日本にも輸入されていますので、今度試してみてください。
ちなみに美味しいリゾットはアルデンテの歯ごたえがある状態で炊き上げます。地方や季節によって色々なバリエーションがありますが、実は「ポルチーニのリゾット」と「ミラノ風リゾット」は私の得意料理です。機会があったらラフォンテでご賞味ください!
お米の他にも、今は実りの秋、そう食欲の秋、健康に感謝して、皆さんもこの季節を堪能してくださいね!