KAYANOのイタリア気分 No.75
2008年3月号
イタリアのレグーミ(豆類)のお話
今月はイタリア料理の食材でよく使われる、豆類・レグーミのお話です。
ラフォンテに長く通ってくださっている生徒さんが、「イタリアンを始めてから豆料理のレパートリーが増えた気がします。」と嬉しいご報告をしてくださいました。
確かに、イタリア人はレグーミをとても上手に美味しくお料理します。
例えば、トマトで煮込んでパスタソースにするとか、スープに入れるとか、茹でてサラダにするとか、つぶしてソースにするとかなのですが、素直な味わいは野菜とも肉とも魚ともとても合います。
当然イタリアの豆類は日本の物と少し違います。全体的に小粒で種類が多いのが特徴です。もちろん、日本の豆でも代用出来るのですが、本場の物はオリーブオイルやチーズ等の、イタリア食材とより良く合う気が します。なので、レグーミは私がイタリアで必ず買い込んでくる食材のひとつです。
メルカート(市場)に行くとレグーミ専門店が必ずと言って良いほどお店を構えていますから、見つけるのは簡単です。
小さな街だと、専門店まであります。フィレンツェに住む知人のシニョーラにふるさとのルッカの老舗のレグーミ(豆類)屋さんに連れ行って戴いた事があります。
ルッカはプッチーニの生家があるトスカーナの海側の街です。偉大な音楽家を生んだシックな街を彩るように、店先にはスペルト小麦とブレンドしたもの、お米とブレンドしたものと色とりどりのレグーミが並んで いました。
老舗だけあって、センスも良く、しばし見とれてしまったほどです。
その後、彼女の実家にお邪魔して80歳を過ぎたマンマのレグーミのスープを戴きました。水で戻したレグーミに、香味野菜・パーネトスカーノ・ブイヨンを加えて、火を入れて休ませる事を繰り返しながら、数日かけて作るのだそうです。素朴な味は絶品でした。
そう言えば、トスカーナの人々はマンジャファジョッリ豆をたくさん食べる人々とイタリアでも有名です。彼女はマンマの豆料理で育って来たのでしょうね。
マダムバタフライ等の大作のオペラを書き上げたプッチーニのエネルギー源と心の拠り所はもしかしたらレグーミを使った素朴な料理だったかもしれませんね。
レグーミ専門店では量り売りで買うことが出来ます
そんなレグーミの中でも、私が好きなのはファジョッリ(白インゲン)とレンティッケ(レンズ豆)です。
ファジョッリは日本の大福豆よりちょっと小ぶりでサラダにしてもパスタと合わせてもさりげなく主張をしながら、料理を美味しく仕上げてくれます。
写真は猪のサルシッチャ(ソーセージ)とファジョッリをトマトで煮込んだものです。
やはりトスカーナのモンタルチィーノのオステリアで戴きました。ペコリーノトスカーノのチーズをたっぷりかけると、サンジョベーゼを使った地ワイン「ロッソ ディ モンタルチーノ」とピッタリでした。
それから、いつもキッチンに常備している軽い苦味と素朴な味わいのレンティッケ、ミネストローネには必ず入れます。
最後に、そのお気に入りのレンティッケを使って1月のレッスンで作った「レンズ豆のトルティーノ」をご紹介します。
「コインの形をしたレンズ豆を年の初めに食べると財宝に恵まれる!」という言い伝えを叶えるお料理として、考え付いた私の創作料理です。
レンズ豆を茹でたら半分つぶして、パルミジャーノパウダーとオリーブオイルを加え、つなぎはジャガイモの裏ごしを使います。ベーコンをはめ込んだセルクルに入れてオーブンで焼けば… ご覧の通り、形も大きなコイン型に仕上がり溢れ出る財宝に恵まれること間違え無し!
そう言えば、レグーミを引き立てる調味料としてエキストラバージンオイルは欠かせません。豆の素朴な味わいを、香り高いオイルが引き立ててくれるのです。
レグーミ(豆類)は少し地味な食材かもしれませんが、皆さんも上手に使ってイタリアンのレパートリーを増やしてみてくださいね。