KAYANOのイタリア気分 No.76
2008年4月号
素朴な味が魅力 フォッカチャ
皆さんはイタリアの素朴なパン、「フォカッチャ」をご存知ですか?材料は小麦粉・水・塩・イースト・オリーブオイルといたってシンプル。
ラフォンテのレッスン時に自家製の物を召し上がっていただいているので、生徒さんの間ではお馴染みです。これはイタリアから持ち帰った配合で焼き上げているのですが、現地ではBen cotta(ベンコッタ)と呼ばれる焦がしぎみに平たく焼き上げた物と、Mlovida(モルビダ)と呼ばれる高さ出して軟らかめに焼き上げたタイプと2種類あるようです。どれも決まって、上に指で押さえつけた模様があります。
オリーブオイルをふんだんに使ったジェノバの物が有名ですが、トスカーナではスキアッチャータとも呼ばれています。シンプルな味わいだけに、パニーニにしてチーズやサラミ等ともよく合うし、お料理の味を邪魔しないのでパスタ料理・肉や魚料理と共に食事の時に戴くテーブルパンとしても人気があります。
フォッカチャはラテン語のフォカス「Focas(火)」を語源として、紀元前から食べられていたものがナポリに伝わりピッツァの原型になったとも言われています。
プレーンの物が一般的ですが、中にはハーブやオリーブを練りこんだもの、表面に岩塩やペッパーでアクセントを付け物、ピッツァの様にトッピングをした物、パイの様にフィリングを入れた物と様々です。
私は各地で色々なフォカッチャをいただきましたが、一番思い出深いのは、アルベロベッロのメインストリートにある「Casa di focaccia」(フォカッチャの家)のものです。そこは白い石造りの可愛い家族経営のお店ですが、30年以上、数種類の切り売りのフォカッチャを売っているのだそうです。プーリアは特に粉とオリーブオイルが美味しい地方なので、いくら食べても飽きませんでした。
昨年、料理研修で滞在したときに、20代の息子さんチッチョととても気が合い、仕込みから焼き上げまで見せてもらい、さらにお客さんに出す時の温め方まで教えてもらいました。チッチョは田舎の素朴な若者という感じですが、フォカッチャを焼く時だけは職人の横顔でした。彼は親切で面倒見が良くて、研修時ラフォンテの生徒にも人気がありました。その後、一人旅で旅した生徒もとても良くしてもらったとかノノ。
弟というには歳の差がある彼ですが、時々「kayano! 元気かい?今度いつ来るの?」と電話があります。
お互いの近況報告の後は、決まって私は「チッチョのフォカッチャが食べたいよ!!」と答えます。「日本に焼きに行こうか?!」とプーリア訛りの笑いが日常生活の忙しさをしばし忘れさせてくれます。
そう、彼のマンマもバッボもお姉さんも素朴な人柄でフォカッチャの味わいのような家族でした。そんな家族の暖かさが感じられるフォカチャを、もし、アルベロベッロにいらしたら、「Casa di focaccia」で味わってみてください!!
その時はチッチョに「kayanoの紹介!」と言ってくださいね。カットのサイズか種類が倍になるかもしれません。
「素朴な味が魅力フォカッチャ」もし機会があったら、イタリア各地で食べ歩くのも違った旅が楽しめるかもしれませんヨ!