KAYANOのイタリア気分 No.86
2009年2月号
太陽と大地からの贈り物~ニネッタの料理~
特別な道具も使わないのに…どうしてこんなに美味しいのだろう?
ニネッタの台所に並ぶ調理器具は、もち手が黒いアルミのお鍋・パスタを茹でる寸胴鍋にちょっとガタついたフライパン、どれもサイズが大きい。
そして、先が焦げて持ち手が変色した数本の木ベラにお玉・ザル 等、どれも使い込んだ物ばかり…..
計量カップやスプーンもなければ、プロセッサーやミンサー 等の機械類はどこにも見当たりません。キッチンも最新設備とは言えず、この地方特有の石造りの家は、たとえ改装してあっても使い勝手が良いようには思えません。実は、水回りも外です。
この設備で大人数の料理を仕上げるのですから、頭が下がります。
以前、トスカーナの家庭で料理研修をした時は、食洗機付きの最新のキッチンで、フードプロセッサーやミキシングの機械を上手に使いこなしていました。
美しくスタイリッシュなキッチンで、お洒落な調理用具、エレガントに仕上がって行くお料理。それは、まさに日本人が描くイタリア家庭のイメージでした。
それだけに、その後で触れたニネッタのお料理には驚かされました。
彼女はとにかくダイナミックに料理を仕上げます。まな板包丁や包丁はあまり使わず、野菜は大振りなまま茹でて後で潰す、といった具合です。
材料の組合せに固定観念はなく、集まるメンバーの好みを聞き素材の状態をみて、速攻でメニューを組み立ててゆきます。数え切れないレシピが頭に入っていて、その手際は惚れ惚れするくらいです。(とても勉強になりました。)特に素朴な野菜料理が得意です。
平然と3~4品を同時に仕上げて行くのですが、暖炉も大切な火口、そこでは野菜類を焼いています。
アドリア海の塩とプーリアの大地のオリーブオイルをかけるというシンプルなコントルノ(付け合せ)に仕上がります。焼き具合、味付け、それが、なんとも言えずに美味しいのです。特に、オリーブオイルの使う量は半端ではありません。
写真の様に色とりどりに並べられた野菜にもたっぷりとオイルをかけて焼き上げます。
でも、何故か重くならずに素材のが生かされて仕上がるのです。
オリーブオイルと言えば、オリーブ畑が広がるプーリア州はイタリアの約45%のオイルが作られているのを知っていますか?
彼女の家でも、オリーブ畑を持っていて、家族総出で取り入れ絞り、1年分をキープしておくのだそうです。そう、一家が結束した正真正銘のオーガニック、そこにも美味しさの秘訣があるようですね。
ここで、私が好きな、彼女のお料理をいくつか御紹介したいと思います。
まず、チキンの香草焼きです。鶏の胸肉にパン粉とハーブとオリーブオイルをかけて、水を張り火口にかけて火が通ったらオーブンで焼き上げます。ラフォンテでは「ニネッタ風チキンの香草焼き」として上級・中級コースで御紹介しました。
もう一つは、「ポテトのテガーメ」です。ポテト・野菜・お米・ハーブを重ねていって、オリーブオイルとお水を加えて炊き上げます。それぞれの素材が溶け合い、なんとも言えない味わいです。 そう言えば、御主人のニーノも時々、お手伝いをします。
この地方の伝統料理、乾燥そら豆を茹でてピューレを仕上げる時、自慢のオイルを練りこむのは彼の仕事です。楽しそうに料理をする彼の写真を御紹介したいと思います。思えば、彼女の料理は太陽と大地からの贈り物のようです。家族に愛情こめて作る姿は、南イタリアのマンマの典型ですね。
そんな素敵な一家にホームステイをしてニネッタの料理を学べるツアーを南イタリア便りで執筆をお願いしている 祝 美也子さんが企画してくださいました。
実は、秋に私もニネッタの家で取材に参加、協力させていただき、今回実現に至ったのです。彼女が私の思いもこめて、形にしてくださったのです。イタリア料理好きの方々と会う機会が増えると、ニネッタもとても喜んでくれています。
プーリアの土地と料理をますます、知って頂く、良い機会です!
まずは、サイトを見てみて、良かったらニネッタファミリーの人柄に触れて、彼女の料理を味わってみてくださいね。
サイトはこちらです。