ミラノ便り No.3
チーズ王国イタリア
世界には2千種類のチーズが存在すると言われていますが、イタリアには何種類あるのかご存知ですか? なんと、500種類です。チーズの国と言うとすぐフランス、スイスを思い浮かべる人も多いと思いますが、イタリアもチーズ王国です。牛、羊、ヤギ、そして水牛のミルクから作ったチーズがあります。
今年はイタリアでは、チーズのイベントがいくつかありました。
まず、9月にピエモンテのブラで開催されたスローフード協会主催のその名も“CHEESE”。
ヨーロッパを中心に様々なチーズが集まります。
今回のテーマはヤギのチーズ。
十勝から日本のヤギのチーズも出品し注目を集めました。
この写真は珍しいサルデーニャの羊の胃袋に入れて作ったチーズです。
チーズ作りの原点と言えます。
そして10月下旬にはヴェローナで山のチーズのオリンピックが開催されました。
夏の野外オペラ劇場として有名なアレーナの脇の広場に仮設されたシャレー風の小屋には、山の香いっぱいの牧草を食べた動物たちのミルクから作られたチーズが勢揃い。
イタリアのDOP(原産地保護呼称)のフォンティ―ナの生産者組合は、昔ながらの道具でチーズ作りを再現! この世界も工業化が進んでいるなか、懐かしい工程を見ようとする人であふれました。
昨年スイスで行われたこの大会で、見事金メダルを獲得した北海道の共働学舎の宮嶋さんが素晴らしい仲間たちと心を込めて作ったお酒で洗ったチーズは、地元のテレビでも報道され、試食しようとするイタリア人で大賑わい。
気軽に試食したり購入したりできるオープンスペースの脇には5ユーロ払うと数種類の地元のワイン、各地から集まった100種類を越える山のチーズが楽しめる会場もあります。
中に入ると、見事なチーズの山!
すっかりチーズにはまってしまった私は、今度はミラノの北、スイスとの国境近いドモドッソラの町から車で15分ほどのオイラという人口100人ほどの村へ足を伸ばしました。
ここには19世紀に作られた共同のチーズのアトリエが残っています。当時、貧しかった村人は1、2頭しか牛を飼っていませんでしたからミルクの量が少なすぎてチーズ作りができませんでした。皆が搾ったミルクをここに持ってきて、チーズ作りをし、出来上がるとミルクの量に応じて分けていたのです。協同組合の原点ですね。
現在は、あるチーズ熟成会社が熟成庫として再利用しています。大きな木の樽には最近イタリアでブームの、ワイン作りの過程で出たブドウのかすに漬けたチーズが浸っていました。
今でも時々、薪で火をおこしてチーズを作っているとのことで、古い道具が並んでいました。
当時の貧しかった村人に思いを馳せつつ、澄み切った青空と紅葉のコントラストが美しいオイラの村を後にしました。